『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』感想*ひたすらに生きる二つの命
※後半にネタバレあり(注釈後)※
映画感想語り、今回は『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012年)です。
ヤン・マーテル著『パイの物語』が原作。
監督はアン・リー。
とにかく映像が幻想的で美しい。
この画質では表現しきれませんが、こんな感じです↓
これはブルーレイで見るべき芸術作品です。
*あらすじ*
小説家ヤン・マーテル(レイフ・スポール)がインド人の青年パイ・パテル(イルファーン・カーン)が語る幼少時代を聴きに訪れる。
ママジ(パイの叔父)から「話を聞けば神を信じる」と聞いてやって来たのだという。
〈ここからパイの幼少期の回想になる〉
パイはプールが大好きな父の親友ママジからパリの「世界一美しいプール」ピシン・モリトーと名づけられるが、ピシンはインド語で「おしっこ」と同じ発音で、クラスでからかわれるようになる。
これを避けるために自らニックネームは円周率のパイ(π)と名乗り、数学の授業では暗記した円周率を延々と書き上げてみせる。
パイ少年は神に興味を持ち、ヒンドゥー教とキリスト教とイスラム教とを同時に信奉するようになる。
母と父は植物園を営んでいたが、さらに動物園も経営してベンガルトラなど多くの動物を飼っていた。
パイはベンガルトラのリチャード・パーカー(売人の名前と勘違いしてつけられた名前)に興味を持ち、仲良くなろうと檻越しにエサで引きつけるが、それを見た兄が父を呼んでパイは強く叱責される。
そして忘れられない教訓として、無残にトラが子ヤギを喰い殺すところを見せた。
その教訓の日から、動物への甘い幻想は消えた。
回想はパイの青年期へ。
補助金が出なくなり動物園を閉めることになったパイ一家は、新天地を求めて動物とともにカナダに移住を決断。
ダンス教室で出会った恋人アナンディとも別れることになる。
乗船した日本の貨物船では、母親がベジタリアンだというのに肉エキス入りのルーしかないというコックに悩まされ、仕方なく白米だけで食べていると「肉汁は肉じゃない」と仏教徒の船員に言われる。
ある晩大嵐に襲われ、その迫力に興奮したパイは外に出て叫ぶ。
するといきなり船が大きく傾き沈み始める。
家族を助けようとするも船は沈没し、動物達も海に投げ出される。
16歳の少年パイが人間では唯一の生存者となった。
彼はなんとかライフボートに乗り、骨折したシマウマ、浮きで漂流していたオランウータン、ボートに隠れていたハイエナ、泳いで乗り込んできたリチャード・パーカーと過ごすことになるーー
*評価(最高★5)
全体 ★★★★☆
とても哲学的で解釈が難しい作品です。
ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、仏教など色んな宗教感が出てきます。
小難しいことは分からずとも、映像の美しさだけで一見の価値アリです。
前半の回想シーンは少し退屈かもしれませんが、漂流してからはパイとトラとの駆け引きにぐいぐい引き込まれます。
信仰、自然、命、そんなものを感じる作品です。
感動 ★★★★★
まず映像美にひたすら感動します。
オープニングの映像はアニマルプラネットを見ているかのようでした。
本物とCGの区別がつかないくらい、非常にリアルです。
そしてパイとトラの生きる意志に感動します。
ラストは、これでいいんだという気持ちになりました。
悲惨さ ★★★★☆
動物達が波に呑まれていくのは胸が痛くなりました。
トラと227日もの漂流ですから、孤独感、飢えなど見てる方が辛いシーンもあります。
海は美しく恐ろしい。
オススメ度 ★★★★★
神や生命の本質を問うような内容は人を選ぶと思いますが、私は映像美も含めてすごい…!と思いました。
描き方は非常にファンタジックですが、人間とトラの友情物語などというおとぎ話ではありません。
リアルな自然の厳しさを教えてくれます。
映像アートだと思って観るといいと思います。
可哀想なシーンもありますが、動物好きには特にオススメです。
怖いけどリアルなリチャード・パーカーがだんだん可愛く見えてきます。
本物にしか見えない∑(゚Д゚)↑
※ここからネタバレ感想↓※
ネタバレ書き中……_φ(・_・
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※ここからは内容を知っている前提です。
これは無宗教であり知識のない私には、真の理解は到底できません。
圧倒的な迫力にただただあんぐりしてました( ゚д゚)
こんな、夢とも現実ともつかない映像美が繰り返されます。
全て何かを意味しているのでしょうが、それが分からなくても「綺麗…!」だけで充分だと思います。
説明できない代わりに、多めに画像を入れてみました。
分からないなりに考えてみましたが、テーマは『いかなる苦境においても神と己を信じて力強く生きろ』だと私は思いました。
ヒンドゥー教、キリスト教、イスラム教と、なんとなくざっくりと各宗教色は説明してくれます。
象の姿をした神ガネーシャなどを始め、色んな神の名前なんかは日本では漫画やゲームで知る機会があったりしますよね。
そこが宗教感の薄い日本の良いところでもあります。
良くも悪くも信仰がないので、いち異国文化としてポップカルチャーに落とし込むのを躊躇しない。
それが問題視されることも少なくないので、慎重にはならないといけない部分ですが。
かくいう私も実感は薄いので「これはダメなんだ…」と思ってしまうことも多いですε-(´∀`; )
繊細な問題ですよね。
パイのお父さんは科学の力に病を救われてから、神を信じなくなったリアリスト。
お母さんは神を信仰しつつ、子供に押し付けたりしない優しい女性。
宗教には詳しくないですが、洋画を観ているとキリスト教的思想が入っている場合が多いですよね。
他の宗教は分かりませんが、キリスト教では科学が禁忌みたいにされてる場合が多いと感じます。
生物や自然を操作するのは神だけに許される行為、ということですね。
そんな多様性の縮図のような両親に育てられたパイは、先入観なく色んなことに興味を持つ子供になりました。
多数の宗教を信仰するというのは、ある意味日本の多神教と似てるのかもしれません。
日本の場合は御墓参りや初詣、クリスマスにハロウィンなど生活に根付いているので宗教的な感覚が限りなく薄いですが、それらを多様な宗教的儀式だと意識してやっているのがパイのような事例でしょう。
親が動物園を経営しているせいか、動物にも興味を持つパイ。
特に興味深々だったのが、ベンガルトラのリチャード・パーカーでした。
パイはリチャードの瞳の奥に何かを感じますが、肉食獣とは人間に制御できるものではない恐ろしい存在なのだと父に厳しく教えられます。
パイは、どんな動物でも仲良くなれる童話のような世界はないという現実を知りました。
実際に漂流した際も、リチャードは一切懐いてくれません。
いつ襲われるか分からないヒリヒリした空気がずっと漂っています。
ボードはリチャードに支配され、パイはずっとイカダ暮らし。
それでも立ち向かい続けるパイの精神力がすごい。
トラと人間が漂流しているうちに心を通じ合わせていくという話を想像していた私の夢想も砕かれました(笑)
そんなおとぎ話みたいなハートフルな話じゃないんだこれは!
といっても、何か言葉にできないような絆は確かにあったと思います。
ちなみにリチャードはもちろんフルCGですが、リアルさが半端ないです。
この状態が…
実際の映像ではリアルと遜色ない姿に!
人間をCGで表現するとまだまだ違和感がありますが、それ以外の自然や生物はほぼほぼ違和感なく表現できる技術が確立しているんですね。
もちろんかなーりのお金をかけないとですが(;-ω-)ゞ
オープニングの動物達の映像も、本物かと思うくらいに自然でした。
この話は大人になったパイが、1人の作家に語った過去の実体験を回想する形で進行します。
リチャードとパイの277日にも渡る漂流話は信じがたいものでした。
日本船の保険会社の人達には信じてもらえず、パイは仕方なく動物を人間に例えた話を語って納得してもらいます。
実際パイが嘘として語った話が真実で、パイが見ていたのが全て幻想だった可能性もあります。
ですがパイは聞きます。
「君だったら、夢のようなリチャード・パーカーの話とただの漂流記どっちがいい?」と。
このパイの一言に全てが集約されています。
何を信じるかは自分次第。
作家は夢のある話を選び、この話を本にすると約束します。
保険会社の報告書には「トラと漂流した例はない(ので保険の判断が難しい)」と記載されていました。
保険会社の人達も、夢のような話を信じたのです。
私もリチャード・パーカーとの物語が好きです。
ここまで読んでくださりありがとうございました(*´ω`*)ゞ
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