みこブロ

思ったことを好きに書いていきます。今は初心者、女性目線(になってるかは謎)の映画レビューがメイン。時々日常。興味があればまったり覗いてみてください(*'ω'*)

『アクト・オブ・キリング』評価感想*変わった切り口のドキュメンタリー

※後半にネタバレあり(注釈後)※

 

 

映画感想語り、今回は『アクト・オブ・キリング』(2012年)です。

 

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R15。イギリス・デンマークノルウェー合作。

監督はジョシュア・オッペンハイマー他。

インドネシアで実際にあった大虐殺事件を扱ったドキュメンタリー。

「昔大虐殺を行った人間に、それを再現する映画を撮らせたらどうなるか」というテーマの作品です。

DVD版では劇場公開時にはあったシーンが40分間くらい大幅カットされていまが、理由は不明です(なんとなく察せますが)

2年後に姉妹編『ルック・オブ・サイレンス』が公開されています。

こちらは被害者側に焦点を当てた作りになっています。

 

*あらすじ*

1965年、時のインドネシア大統領・スカルノスハルトのクーデターにより失脚。

その後右派勢力による「インドネシア共産党員狩り」と称した大虐殺が行われ、100万人以上が殺害されたといわれている9月30日事件を扱った作品。

事件後30余年にわたるスハルト独裁体制のもと、事件に触れることはタブーになり、加害者は訴追されていない。

当時虐殺に関わった加害者たちを取材し、彼ら「プレマン」にその時の行動をカメラの前で演じさせて再現するという手法をとった異色のドキュメンタリー映画

「プレマン」とは、現地の言葉で「自由人」という意味。

何にも縛られず好きなことをやる、いわゆるギャング(無法者)のこと。

彼らは自分たちのやった偉業を世界に知らしめようと、意気揚々と映画製作の準備を進めていく。

その過程で彼らの心境は徐々に変化していくーー

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*評価(最高★5)

 

全体 ★☆☆☆☆

映画というより長編ドキュメンタリー番組です。

映画を撮ろうとする彼らをひたすら撮影し続け、当時の話を聞いたり、今の状況や心境を語らせたりするだけの作品です。

ストーリーがあるわけではありません。

淡々と真実を撮り続けます。

しかもシーンが前後するので構成が分かりづらいです。

それを重々理解して観ないと、思い切り裏切られますので注意。

 

悲惨さ ★★★★★+

当時の事件は詳しく知りませんが、非常に残酷で悲惨な状況だったことはひしひしと伝わってきます。

詳しい拷問の仕方や殺し方を聞くだけでゾッとします。

こんなことが現実に行われていたなんて、下手なホラーよりずっと恐ろしいです。

彼らの心境の変化も、どうしようもない虚しさを感じます。

 

ダークさ ★★★★★+

登場する人物の多くは殺人者です。

ですが今の彼らは人並みに幸せに暮らし、当時の殺人を武勇伝のように語ります。

それが現在民衆の上に立つ人物だったりするんですから、なんともやるせない胸糞悪さを感じます。

日本がいかに平和かを実感します。

 

オススメ度 ★☆☆☆☆

たぶん先にネタバレを見ても問題ないです。

これが映画といえるか微妙なラインですし、映画として観るのはオススメしません。

流れは非常に退屈です。無駄に長い。

感性もだいぶ理解し難い部分があります。

ドキュメンタリーとしては、とても考えさせられる内容です。

多くの人を殺めておきながら幸せに暮らしている今、当時の残酷な仕打ちを再現していく中で人はどう思い、変わっていくのか。

学校の教材などに使うには、非常にいい作品だと思います。

カット無しの全長版に興味があればこちらを↓

 

 

※ここからネタバレ感想↓※

 

 

 

 

ネタバレ書き中……_φ(・_・

 

 

 

 

 

 

ーーーー

※ここからは内容を知っている前提です。

 

 

とにかく声を大にして言いたいのは「これは密着型ドキュメンタリー映像だ」ということです。

私も観る前は少し勘違いしてました。

ドキュメンタリーだというのは分かってましたが、あくまで「本人達が監督した映画」がメインで、その前後に撮影の様子やコメンタリーが入るのかなぁと思ってました。

ですがいざ再生すると…いきなり謎すぎる世界観の映像が始まります。

ユラユラと踊る女性陣。

その中心で空を仰ぐ黒いローブのお爺さんと、女装(というか謎の仮装)をした輝くおじさん。

この時点で「あ、ヤバイやつ観ちゃった」と心が折れかけます。

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怪しい宗教のイメージビデオのようです(;´Д`)

まぁ〜主義や〜派も、それに傾倒するようになってしまえば宗教みたいなものですけどね。

しかも長い。無駄に長い。

これに耐えると、ようやく密着ドキュメンタリー開始です。

今思えば「本人達が監督した映画」がメインじゃなくて心からよかったと思います。

色んな意味で、正気を保てる気がしません_:(´ཀ`」 ∠):

 

この作品は、テレビでよく見る再現VTRでもありません。

映画を作ろうとする本人たちに、ずっと着いて回って撮り続けた映像を繋いでいるだけです。

その分、リアリティーは抜群です。

製作に関わった多くの現地スタッフは、名前を明かすことが危険を伴うとの理由から、“ANONYMOUS"(匿名者)としてクレジットされています。

それくらい今も根深く遺恨が残っている事件です。

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画像右の白髪の人物アンワル・コンゴがメイン。

当時プレマン達を束ねていたリーダー的存在の人物です。

彼らは「自分達の偉業を後世に残せる」と、昔の仲間を呼び集め、喜んで映画製作に取り掛かります。

 

ドキュメンタリーとしても、無駄に長い上に非常に淡々と進んで退屈です。

映画製作は基本的に口を挟まず自由にやってもらうスタイルなのですが、なんせ素人なので何をやるにもとにかくグダつきます。

そしてひたすらに話が重い。

内容が大量虐殺事件なので仕方ないですが、聞きたくない辛い話やシーンが多いです。

「娯楽的な部分もないと映画として退屈だから」という理由で無駄にコメディー感を出そうとしますが、全く笑えないし感性も理解できません。

ちょいちょい挿入される謎の踊りのシーンはまだしも、殺害シーンや拷問シーンでなぜか女装しているマツコ似の太っちょおじさん。

なんだこの世界感…意味不明すぎる…

癒しどころか、むしろ余計理解できなさが加速します。

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踊り以外にも頻繁に挿入される謎の間。

え?理解できないのは文化や感性の違いのせい…なの?( ゚д゚)?

この斬新すぎる鯉の建物はなんなんだ…!

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余談ですが当時のスカルノ大統領は、日本ではデヴィ夫人の夫として知られてますね。

 

とにかく全てが理解し難く、胸糞悪くて嫌な気持ちになるこの作品。

なんと事件当時の映像は1度も流れていません。

なのに映像が悲惨に見えるのです。

日本とかけ離れすぎていて、これがほんの数年前のインドネシアの現状なのかと驚きました。

国をあげての共産主義者差別が今も根強く残っています。

集団で高らかに自分達を讃える政治家や自衛団の姿は、とても歪で恐ろしく見えます。

「法律は勝者が作るものだ」

という言葉が重くのしかかります。

華僑と呼ばれる人達は、今もプレマン達から虐げられ金を巻き上げられています。

カメラの前だからか、仲のいい雰囲気でサラッとお金を要求するのです。

皆笑顔でお金を渡しますが、目が笑っていないのが分かりすぎて辛い…本当に。

自分はとても平和な国に生きていて、全然世界を知らないんだなと思いました。 

 

当事者達が語る話もひたすら残酷でエグいです。

「この場所で、何人も針金で首をはねたんだ」なんて、再現しながら笑顔で堂々と話すのです。

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針金を使う理由は、血があまり出ないから。

最初は撲殺していたが、血の海になるのでこの方法を考えついたそうです。

R15作品ですが、その言葉だけでR18でもいいくらいです。

彼は、その場で陽気に踊りながら殺していたと語ります。

当時は無法地帯で犯罪どころか武勇伝になってるとはいえ、よく普通の精神状態で生活できますよね。

当時のことを語る彼らは楽しそうにさえ見えます。

そう見えただけで、普通の精神状態でいられるわけがなかったのですが。

 

アンワルは映画を撮っていくうちに当時を思い出し、悪夢にうなされるようになります。

彼は現在2人の孫を持つおじいちゃんです。

とても可愛がっています。

撮影でエキストラの子供達が本気で怖がり泣く姿を見て、だんだん自分のやったことの罪深さを実感していくようになります。

村人を捕縛し、家々を焼き払うシーンを撮ったアンワルは苦々しく言います。

「この子達の未来はどうなるんだ。何があるというんだ」

そうです、自分が未来を潰したのです。

 

完成した映画を観終わると、アンワルは自分が拷問されているシーンをもう一度流してほしいと言います。

それを孫達に観せながら、怖いか?と語りかけます。

彼は、自ら拷問され殺される側を演じたことで、自分が殺した人達の恐怖を実感したと語ります。

それを受けて監督であるジョシュアはアンワルに言います。

「彼らは自分が殺されることを知っていた。

これはただの映画ですが、実際の恐怖はこんなものではなかったはずです」と。

しかし彼は、自分にはその恐怖が分かるのだと言います。

これが自分への罰なのか、被害者達の亡霊が仕返ししてるのかもしれないと。

実際に、彼はこのシーンを撮影している時に本気で怯えているように見えました。

針金で絞殺される場面では、ギブアップサインを出し、恐怖でしばらく動けなくなってしまうほどでした。

殺された人達はいくらギブアップしてもやめてもらえなかったんですけどね…。

 

今更やったことの重さを自覚し嘆いても罪は消えません。

監督が言うように、当時殺された人達はもっと想像を絶するくらいの理不尽さと恐怖を味わったのですから。

因果応報、自業自得です。

いくら後悔したって許されません。

でも、涙を流しながら自分のしたことを悔いる姿にとても複雑な…虚しい気持ちになりました。

彼は多くの人を無慈悲に殺めました。

同情できるはずがないです。

ないのですが…心から悔い涙する彼に自分も涙を誘われたのは事実です。

 

モヤモヤしますね。

そんな行為が許されていた時代が悪いんだ、なんて割り切れません。

が、彼らも心が壊れないよう自分を騙し続けていたんでしょう。

その支えが間違いだったと認めることは、とても大変なことです。

ですが、彼らは自分達の残酷さを認めて悔いることができました。

最初は自分達の武勇伝を残そうと撮り始めた作品でしたが、最後には「共産主義者は悪ではなかった。残酷なのは自分達だった」「世界にこの真実を知らせるべきだ」という観点に変わります。

それだけは素晴らしいことだと思います。

 

アンワルは改めて大量虐殺をした現場に行きます。

「こうやって針金で首をはねたんだ」と笑いながら話していた場所です。

そこで改めて自分の行いを思い出し、何度も吐きながら、その場でやったことをポツリポツリと話すのでした。

そして夜の街に消えていきます。

彼がこれからどう生きるのか。

楽になってほしいとは思いませんが、自分にとっても周りの人達にとっても、少しでもいい環境になるようしていってくれたらと思います。

 

こんな事件がたった半世紀ほど前にあったなんて…今だって色んなところでこんなことが起きているんですよね。

言葉にすると軽くなりますが、争いは本当に虚しさしか生まないなと思いました。

勉強になりました。

でももう2度と観たくないです_(:3」z)_

 

ここまで読んでくださりありがとうございました(*´ω`*)ゞ

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※内容は予告なく変更されたりします。

 

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