『ハンニバル』評価感想*伝説のサイコキラー再臨
※後半にネタバレあり(注釈後)※
映画感想語り、今回は『ハンニバル』(2001年)です。
R15サイコホラー。監督はリドリー・スコット。
原作は引き続きトマス・ハリス著の同名小説。
『羊たちの沈黙』から10年という長い期間を置いて公開された続編です。
『羊たちの沈黙』評価感想*伝説のサイコキラー誕生作 - みこブロ
前作で世に解き放たれたハンニバル・レクター博士の本領発揮です。
今ではこっちの方がレクター博士の代表作になってますね。
*あらすじ*
全米を恐怖に陥れた「バッファロー・ビル事件」から10年後。
ボルティモアの大富豪メイスン・ヴァージャーは、刑務所から脱獄したハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)の行方を追っていた。
メイスンにとって彼は殺しても飽き足らないくらいの憎い相手であった。
当時レクターと接触していたFBI特別捜査官クラリス・スターリング(ジュリアン・ムーア)は、リッチモンドの麻薬捜査で多数の犠牲者を出したことで遺族から告訴されていた。
政財界に絶大な影響力をもつメイスンはマスコミの報道で彼女の存在を知り、司法省のポール・クレンドラー(レイ・リオッタ)を利用し、クラリスをレクターの捜査に復帰させようと目論む。
10年前に脱獄したレクターは現在イタリアのフィレンツェに潜伏し、司書見習いとして生活していた。
フィレンツェ署のパッツィ刑事は、捜査で知り合った男の正体が10大凶悪犯として指名手配されているハンニバル・レクターだと気づく。
パッツィ刑事はFBIに情報提供しようとするが、ふと彼にかけられている懸賞金を調べる。
多額の懸賞金をかけている富豪のメイスンを知ったパッツィ刑事は、警察としてではなく個人的情報を売ろうと画策するーー
*評価(最高★5)
全体 ★★★★☆
前半はレクターを捕らえようとする人達の交錯する思惑がメインですが、中盤からサイコキラーレクター博士覚醒です。
まさに「触らぬ神に祟りなし」です。
静かな生活と楽しみを邪魔された鉄槌を下しに動き出します。
クラリスとの歪な関係は、周りを巻き込んでより深みに落ちていきます。
怖さ ★★★★☆
前作は隔離拘束されている分まだ安心でしたが、今作ではレクター博士を止めるものはありません。
計算された容赦ない殺戮と、あくまで紳士的な態度の対比は、より彼の異常性を感じます。
大体狙われそうな奴は分かるので、いつ博士が来るか…というハラハラ感があります。
グロさ ★★★★★
苦手な人だったら、内容を書いただけで気分が悪くなるかもしれません。
前作を遥かに凌ぐグロさです。
特に最後のアレは、グロいというかもう異常すぎて理解が追いつきません((( ゚д゚ ;)))
今作虫はいないので、そこは安心してください。
オススメ度 ★★★☆☆
前作はサスペンス的な面白さがありましたが、今作はとにかくレクター博士の天才っぷりと異常さを描くのがメインです。
そしてクラリスとの関係性です。
クラリスとレクター博士の、執着や執念のような歪極まる絆がどうなるのか…ぜひ見届けてみてください。
※ここからネタバレ感想↓※
ネタバレ書き中……_φ(・_・
ーーーー
※ここからは内容を知っている前提です。
前作で世に解き放たれたレクター博士の本領発揮です。
この作品でハンニバル・レクター博士という名前が一気に有名になりましたね。
私もこの作品のヒットで名前を知りました。
特に脳みそディナーは、レクター博士の異常さを表現する代表的なシーンです。
他にも残酷なシーンが多いのですが、そういう画像は使わないようにしますのでご安心をε-(´∀`; )
そんなレクター博士。
最初はなかなか出てこず、やっと登場したと思ったら、その有り余る知識を活かしたまともな生活をしています。
でも前作の博士を知っていると、端々に感じるんですよね。
静かな狂気を。
その真っ直ぐに見つめる目が!!怖い!!
やっぱりこのまま穏やかに老後を過ごしてくださいと思いました(゚-゚;)
ですがそんな訳がなく、穏やかに過ごすレクター博士に近づく不穏な空気。
不穏さを出しているのは本人ですが。
前作で特別な心の通わせ合いをしたクラリスは、立派なFBI捜査官になっていました。
ちなみに演じるのは前作のジョディ・フォスターに代わって、ジュリアン・ムーアになっています。
理由は分かりませんが、10年経ってますし色々あったのでしょう。
雰囲気が似てるので、成長した姿だと思えば前作と続きで観てもほぼ違和感はないです。
ある日クラリスは任務で大きな被害を出し、遺族からその責任を追及されていました。
それは彼女の制止を聞かずに強行した現場警察の失態であり、そのせいで優秀な同僚を失ったのだとクラリスは主張します。
しかし聞き入れては貰えず、捜査官としての評判が地に落ちた彼女は悔しさを滲ませます。
「私はFBI捜査官として現場で撃たれて死ぬのは覚悟しています。
けれど許せないのは、仲間に背中を撃たれることです」と。
正義感の強いクラリスは「迅速な事態収拾のためには、時に真実を曲げてでも妥協や謝罪をすることが必要」という組織的な考えが許せませんでした。
彼女は今でも個人的にレクター博士を追っており、彼女はそれを生き甲斐にもしているような気がありました。
そんなクラリスに興味を持ったのが、レクターを追い続けている大富豪メイスン・ヴァージャー。
彼はレクター博士の4番目の被害者で、唯一の生き残りでした。
精神科医であったレクター博士の患者だった彼は、博士の巧みな心理操作で自ら顔の皮を剥ぎました。
う…うん(゚-゚;)
側から見たら、異常者が更なる異常者に追い込まれてフィーバーしただけですね。
喋れはするものの、ほとんど自分で動くこともできない無残な姿になっています。
今はその資金力を活かして、レクターの痕跡集めや独自捜査をしています。
自分の手でレクターを嬲り殺すために。
メイスンに招待されその話を聞いたクラリスは、博士をメイスンの手にはかけさせまいと本格的に捜査を再開します。
博士に正式な法の裁きを受けさせたいという思いと、彼は自分が見つけるという個人的な執着があったのでしょう。
まずは長年レクター博士の世話役をしていたバーニーに会いに行くクラリス。
彼女は「自分が狙われる不安はないの?」と聞きますが、博士は自分に敬意を払う人間は狙わないから大丈夫だとバーニーは言います。
そして当時訓練生だったクラリスのことを、博士はこう言っていたと言います。
「彼女は深く宙返りする鳩だ」と。
鳩は高く飛んでから地上へターンする癖があり、それには深い浅いがあるそうです。
そして両親共に深いターンをする鳩だと、その子供は地面に激突して死んでしまうのだそう。
博士は「彼女の片親が深いターンをする鳩じゃないことを祈る」と言っていました。
実際クラリスはその強すぎる正義感ゆえに若くしてFBIで名声を上げ、そして今回の事件で一気に地へ落ちました。
これ以上彼女が落ちるのか、そうではないのか。
博士がクラリスに特別興味を持つのはそこのようです。
バーニーは当時のレクター博士とクラリスの対話を録音したテープを彼女に託すのでした。
クラリスは当時の会話を何度も再生し、ヘッドホンで聞き続けます。
それは彼との会話に深い依存と安息を見出しているようにも見えました。
そんなクラリスの元に届く一通の手紙。
彼女は瞬時にレクターからだと気づきます。
それはクラリスの落ちぶれっぷりを皮肉った、博士からの挑発とも言える内容でした。
手紙に僅かな自分の手掛かりを残すのもそれを裏付けています。
それはハンドクリームの香り。
クラリスそこから店をいくつか割り出し、防犯ビデオの映像入手を地元警察に依頼します。
警察職員がビデオ映像をダビングしているのをふと見たパッツィ刑事は、そこに見知った顔を見つけます。
それは先日事情聴取をした教会の司書見習いでした。
パッツィ刑事は、その教会で失踪した前司書の行方を捜査していました。
恐らく…というかほぼ確実にレクター博士が殺して乗っ取ったのでしょう。
もちろん行方を聞いても博士は知らないふりをします。
パッツィ刑事はレクター博士の完璧すぎる振る舞いになんとも言えない違和感を覚え、失踪に関わっているのではないかと気にしていました。
そしてビデオを見て、その司書見習いがFBIが長年追っている凶悪犯罪者だと気づきます。
…気づいてしまいます。
欲に負けたパッツィ刑事は、FBIへの情報提供をわざと送らず足止めし、独自に掴んだ指紋情報をメイスンへ売ります。
ちなみに指紋を取ったスリの達人は、すれ違った瞬間素手で下腹部を抉られ死亡しました。
どんな握力してるんだ…((( ゚д゚ ;)))
指紋もメイスンを呼び出すためにわざとつけたのでしょう。
ついにレクターの足取りを掴んだメイスンは大喜び。
パッツィ刑事には、奴の居場所だけ教えて以後関わるなと口止め料も含めた大金を渡します。
しかしパッツィ刑事は変な正義感からか「自分も最後まで見届けたい」と言い出します。
あぁそこでやめとけばよかったのに…。
まぁ今更やめたところで博士には最初から全てお見通しなので、いつか断罪されるとは思いますが…(;-ω-)ゞ
パッツィ刑事から目をつけられたことを瞬時に察知し、彼の劣等感や焦燥感を煽る巧みな心理操作で、FBIへの情報提供を辞めさせるのは流石としか言えません。
一体どこまで見透かしてるんでしょう、その洞察力怖すぎです。
博士はあくまで、自分の出したヒントからクラリスが辿り着くのを楽しみたいんですよね。
パッツィ刑事やメイスンは、無粋な邪魔者のワケです。
メイスンによるレクター捕獲作戦が決行されますが、もちろん勝てるはずもなく。
パッツィ刑事は腹を裂かれて、臓物を散らしながら無残な首吊り死体を外に吊るされます。
個人的にはこのシーンが1番グロいと思いました。
ほぼシルエットでしたが、はっきり形が分かる千切れた腸をぶら下げた首吊り死体はエグかったですね。
博士が食べたいと言っていたパッツィ刑事の妻はどうなったんでしょう…有言実行な博士なので、たぶん美味しく頂かれてますよね(´-ω-`)
メイスンの送った手下もアッサリ首を切られて終了です。
メイスンに平穏と楽しみを邪魔されたレクター博士はお怒りのようです。
わざと街中の監視カメラに映るような場所でパッツィ刑事を殺して、挑発するようにカメラに手を振ります。
その映像を観たメイスンは、クラリスを使って彼を呼び出そうと考えました。
「レクターの楽しみはクラリスを自分の手で堕落させること」であり、それを他に邪魔されたら黙って見てはないとふんだのです。
メイスンはFBIのポールを金で買収し、クラリスを罠に嵌めて職務停止処分に追い込みました。
クラリスはメイスンに嵌められたのだと訴えますが、証拠まで用意されているので聞き入れてもらえません。
失意のクラリスは家に帰ってソファで眠り込みます。
メイスンのその行動は完全にレクター博士を怒らせました…悪魔の反撃開始です(゚-゚;)
目が!目がぁぁ!!怖い…!!
瞬きをあまりせず、ジッと物事を見据える目は彼のヤバさを1番表しています。
目を覚ましたクラリスは、テーブルの飾りを見て博士が来たのだと気づきます。
するとタイミングを見計らったように電話が鳴ります。
レクター博士との追いかけっこの始まりです。
クラリスは拳銃を持って飛び出し、電話を繋いだまま博士の指示の通りに動きつつ居場所を探ります。
駅中のショッピングモールで翻弄されるクラリス。
その後をつけるメイスンの手下達。
博士までもう少しというところまで近づいたクラリスでしたが、メイスンの手下が先回りして博士を気絶させ捕まえます。
クラリスは街中で銃を出したことによりFBIに家に連れ戻されます。
しかし諦めないのがクラリス。
メイスンの屋敷に向かい、どこかへ移送される博士を追います。
メイスンはレクターを巨大なイノシシ達に喰い殺させようと画策していました。
拘束されて、昂ぶるイノシシ達を前に為すすべないレクター…な訳もなく、彼はクラリスが辿り着くことまで計算済みでした。
期待通りクラリスが乗り込み、銃で牽制しながら博士の拘束を解きます。
メイスンの手下と銃撃戦になり、全員倒すも肩を撃たれて気絶するクラリス。
計画が失敗したメイスンは激怒して助手に「奴を殺せ」と叫びますが、助手は拒否します。
レクター博士に「私のせいにしろ」と言われた助手はメイスンをイノシシ達の餌場に落とし、手下を喰っていたイノシシ達はメイスンへと向かいました。
喰われているシーンはあまり見せないようになっているので、それほどグロくはなかったですね。
腸ブラーンは良くてここはダメってどういう裁量なんだ。
ちょっと残念に思った自分はだいぶ刺激的なホラーに毒されてますね(=ω=;)
さてメイスンを始末したレクター博士、最後の仕上げディナーです。
メインディッシュは、クラリスを散々虐めたポール。
全ての支度を終えた博士は、留守中のポールの別荘に侵入してディナーの準備をしながらポールを出迎えます。
目を覚ましたクラリスは、自分がドレスを着ていることに戸惑います。
傷は綺麗に縫われていていました。
麻酔のせいで朦朧としながら部屋を出ると、電話と手錠を見つけます。
彼女は電話を繋いで警察に居場所を逆探知させ、鈍器を持ってキッチンへ向かいます。
そこではディナーの準備をしているレクター博士と、席についたポールが談笑していました。
博士は彼女に、手に持つ鈍器を置いて席につくよう言います。
隙を見てナイフで刺そうとするも簡単に止められ、終わりだと悟った彼女は静かに涙しながらポールと博士の話を聞きます。
博士がポールの被っていた帽子を取ると、彼の頭には額を一周するように切り込みが入っていました。
頭をゆっくりと持ち上げると、脳みそが剥き出しになります。
そしてそれを少しだけ切り取ると、フライパンで焼いてポールに食べさせます。
ここはもう理解が追いつかなすぎて、逆にグロいと感じませんでした。
徐々にポールの様子がおかしくなっていくのは、かなり気持ち悪いです。
実際麻酔を効かせて脳さえ傷つけなければ、あんな状態で普通に会話できるものなんでしょうか…(;´Д`)
クラリスはあまりに凄惨な光景に思わず吐きますが、博士は淡々と語りかけます。
「FBIと君の正義は違う。今やFBIは君の敵だと言えるだろう。君はどうするんだ?」と。
よく考えろと言い残し、ポールと隣の部屋に消えるレクター博士。
クラリスは思い立ったように席を立つと、レクターの元に向かい殴りかかります。
クラリスを押さえつけたレクターは、彼女に「命乞いしないのか?」と問いますが、クラリスは「死んでも言わない」と睨みつけます。
それを聞いた博士は彼女に噛み付こうとしますが、それをやめてゆっくりキスをします。
その一瞬の隙をみて自分と博士の腕を、隠し持っていた手錠で繋ぐクラリス。
外からはサイレンが聞こえ、初めて焦ったレクター博士は「鍵を渡せ!」と詰め寄ります。
さもないと手首を斬ることになると脅しますが、頑なに黙るクラリス。
肉切り包丁を持った博士に覚悟したクラリスは、泣きながら強く目を瞑ります。
警察がポールの別荘に到着すると、クラリスがフラフラと出てきました。
彼女の手は綺麗に残っています。
ぼんやりと揺れるボートを見つめたクラリスは、警察に誰だ!と聞かれて叫びます。
クラリスは最後まで自分の正義を貫きました。
博士は彼女を「深くターンする鳩」だと言っていました。
ですが彼女は、博士や周りがどれだけ追い込んでもその正義を失うことはありませんでした。
地上まで堕ちて死ぬ鳩ではありませんでした。
その誇りはFBIであろうがなかろうが関係ないのです。
全てを計算し尽くして行動していたレクター博士ですが、クラリスだけは最後まで思い通りになりませんでした。
その強さに感服したレクター博士は、自分の手首を切り落として逃亡します。
飛行機の中で子供に脳みそらしき肉を食べたいとねだられた博士は、「新しいものを試してみないとな」と言いながら口に運び、怪しく微笑みますーー
怖いというより、不思議な余韻が残りました。
ここまできたら、レクター博士には最後にもうひと暴れしてクラリスの手で決着をつけてほしいですね!
レクター博士の過去を描く『ハンニバル・ライジング』
そして、それと『羊たちの沈黙』の間の話である『レッド・ドラゴン』も、そのうち観てみようと思います(* 'ω')ノ
ここまで読んでくださりありがとうございました(*´ω`*)ゞ
もし少しでも楽しんで頂けたら、読者登録やコメントしてもらえると嬉しいです♪
※内容は予告なく変更されたりします。
↓参加してみました(* 'ω')ノ