みこブロ

思ったことを好きに書いていきます。今は初心者、女性目線(になってるかは謎)の映画レビューがメイン。時々日常。興味があればまったり覗いてみてください(*'ω'*)

『WHOAMI ピエロがお前を嘲笑う』評価感想*これぞマインドハッキング

 

※後半にネタバレあり(注釈後)※

 

 

映画感想語り、今回は『WHOAMI ピエロがお前を嘲笑う』(2014年)です。

 

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R12ドイツ映画。監督はバラン・ボー・オダー

天才ハッカーの攻防を描いたスリリングなサスペンスです。

「人は見たいものしか見ない」

マインドファック映画という宣伝文句通りの、観る側を騙す何重にも張り巡らされたトリックが見ものです。

ネタバレ厳禁!!

ハリウッドでのリメイクも予定されているようです(2019年現在の情報)

 

*あらすじ*

世間を震え上がらせたハッキング事件を起こし、さらに殺人容疑で追われる天才ハッカーベンヤミン(トム・シリング)が警察に出頭してくる。

ユーロポールから派遣されたサイバー対策課の捜査官ハンネ・リンドベルク(トリーヌ・ディルホム)は、ベンヤミンに尋問を始める。

ベンヤミンはハンネに自分の過去を語り始める。

幼い頃からヒーローに憧れていたこと、そして早くに両親を亡くして孤独な中、唯一夢中になれたのがハッキングだったという過去。

中学時代マリというクラスメイトに恋をし、大学生になった彼女と再会したが微塵も気づかれず虚しい思いをしたこと。

彼女に振り向いてもらう為に、大学に潜入して試験問題をハッキングしようとしたが見つかり、ヒーローどころか罪人になってしまったこと。

そしてとあるキッカケでハッキング仲間と出会い、そこから人生が変わったと。

「私は貴方のカウンセラーじゃないの」と言うハンネに、ベンヤミンは出頭するに至った経緯を細かく話し出すーー

 

 

*評価(最高★5)

 

全体 ★★★★☆

大仰な煽り文句を見て期待値を上げて鑑賞しましたが、それを裏切ることない…いや想像は裏切るんですが…よくできた作品でした。

ハッカーものは小難しくなりやすいですが、この作品もPC知識がないとハッキング部分の攻防はイマイチよく分からないです。

ただ、ネットワーク世界での会話が可視化されるので、普通よりは理解しやすいかと思います。

そもそもハッキングは謎を深めるスパイスであり、メインはリアル世界のトリックです。

この作品は観衆を騙すこと"だけ"に全力を注いで作られた、盛大な「マジックショー」です。

 

サスペンス度 ★★★★★

ハッキングものとしてはありきたりですが、伏線の張り方と回収が上手く機能していて新鮮です。

華麗に騙すテクニックはまさに詐欺師。

逆に言うと、伏線が一気に回収される終盤以外はかなり単調です。

ハッキングするために潜入するスリルはあります。

 

ダークさ ★★★★☆

ネット上もリアルも、アンダーグラウンドな世界に生きている主人公達の姿は刺激的でダークです。

ハッキングしてはドラッグをやり、調子に乗って乱痴気騒ぎ。

たとえイタズラ程度でも、ハッキングは犯罪ですから観ていて気分がいいものではありません。

ましてや企業の悪業を暴くとかでもなく、本当に「いかに自分の技術を誇示するか」だけの為にやっているわけですから悪質です。

 

オススメ度 ★★★☆☆

自己顕示欲の塊のような犯罪ハッカー集団の話でした。

個人的にはあまり好きではない世界観でしたね。

マインドハックという部分では満足です。

いわゆるどんでん返しものとしてはかなり優秀な方だと思うだけに、中盤までの微妙さが残念でした。

登場人物全員、イマイチ魅力に欠けます。

頭がいいのか悪いのか分からない。

1つに秀でると他が疎かになるということなんですかね(;-ω-)ゞ

映画という媒体を使った長いトリック映像だと割り切って観ると、そう悪くないと思います。

※ここからネタバレ感想↓※

 

 

 

 

 

 

ネタバレ書き中……_φ(・_・

 

 

 

 

 

 

ーーーー

※ここからは内容を知っている前提です。

 

 

ネタバレ厳禁な、二転三転するラストがお見事な作品でした。

決して意外な展開ではないのですが、観る側をうま〜く違う方へと誘導してきます。

まんまとピエロに嘲笑われました。

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余談ですがこの仮面、ピエロ恐怖症(実際にある症状です)の人が見たら卒倒しそうなくらい不気味ですね。

 

ブログをやってても感じますが、今の時代PC関連の専門知識があることはもの凄いアドバンテージになるんだなと思いました。

この映画の宣伝文句は「マインドファック映画」ですが、ファックというには病みつき具合が全然足りないですね!

ハックにしましょう…?(笑)

ハックだと「上手く先入観を刷り込んで騙された!」という感じですが、マインドファックと言われると「ナニコレ別に好みじゃないのになんか病みつきになっちゃう…!」みたいなイメージがあります。

そういう意味でなら、過去にレビューした『ヴィジット』をオススメします。

『ヴィジット』評価感想*「ババアが夜中に走り出す」 - みこブロ

※実際マインドファックされるかは保証しません(゚∀゚)

 

観る側の思考を上手く誘導するのは、まさしくマインドハックでした。

マジックでよく使われる手法ですね。

ハッカーはネットでの騙し合いの抜けがけし合いが基本ですが、リアルでもそれができる天才詐欺師やマジシャン要素も併せ持つと大変なことになるんだなと実感しました。

実際にいたら怖いですね(゚-゚;)

 

有名などんでん返し作品は割と観ましたが(レビューはそのうち…)ここまで上手くマジックのように騙されたのはこの作品が始めてです。

ただしそれだけです。

他のどんでん返し作品には驚きと共にそれに至った理由や深い余韻がありますが、この作品はただのマジックです。

マジシャンのマジックを見て、すごい!とは思っても何かを考えさせられることはないですよね。

しかもマジックのトリックを明かされたら「なるほどね!お見事!」とは思いますが、その後に余韻も何もありません。 

この作品の流れ全てはトリックであり、中盤まではラストの為の大仕掛けです。

 

なのでストーリー性に重きは置いていないのでしょう。

それでもラストの二転三転が見事なだけに、ミスリード刷り込みパートである中盤までの中だるみが悔やまれます。

不法侵入ハッキングをしては、祝杯だ!とバカ騒ぎする…の繰り返し。

正直イキり系バカ集団にしか見えません。

そして主人公を始めとする登場人物がイマイチ魅力的じゃない。

 

主人公ベンヤミンは、パッとしない透明人間のような自分の人生を嘆いて、ハッカー集団として活躍することで自分をヒーローのように思っていきます。

ネットの世界では、大活躍の天才ハッカーでいられるのです。

でも現実は何も変わりません。

ビクビクしながらも悪い仲間とつるんで、ハッキングという犯罪行為で承認欲求を満たし、それを自分の強さだと思っているだけ。

そんな行為で最終的に一皮向けても、全然感情移入できません。

 

ベンヤミンを本格的にハッカーの道に引き込む3人組、マックス、シュテファン、パウル

4人は揃いのピエロの仮面を被ったハッカー集団「クレイ」という名で、ネット界に名を馳せようとします。

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特にハッカー達の中でも憧れの存在である「MRX」という名の天才ハッカーに認められようと、どんどん無茶をするようになっていきます。

 

マックスはハッキングの知識はないですが、人を欺く詐欺の天才。

自信家で、自分を大きく良く見せることに拘るプライドの高い性格です。

カリスマ性がありますが、周りを見下している節もあります。

機嫌がコロコロ変わり、すぐに調子に乗っては上手くいかないとキレ散らかします。

いけ好かないタイプです。

 

シュテファンはソフトウェアの弱点を見つけるのが得意な、頭のネジが飛んでるスリル大好き野郎。

崖から飛び降りたりとか、そういう生と死ギリギリのパフォーマンスに生きがいを感じるタイプの人間です。

現実にもそういう人種はたくさんいますよね。

否定はしませんが、わざわざ危険を求める心理はあまり理解はできません(;-ω-)ゞ

ドラッグと酒に酔って、パンイチで「そんなの関係ねぇ!」を披露してくれます(そう見えただけです笑)

マックスと同じくすぐ調子に乗りますが、ケンカを止めたり場を和ますなどマックスよりは理性的です。

 

パウルは基盤1つで何でも作れるメカニック。

幼い頃のトラウマから笑うことができなくなっています。

1番冷静でまともな感覚の持ち主です。

調子に乗るメンバーを諌めますが、毎度多数決により結局協力する流れになります。

作中1番好感が持てる人物です。

 

3人とも仲間意識は強く、例え見つかりそうな危険を犯しても絶対に見捨てない絆の強さがあります。

ベンヤミンが失敗した責任を感じて1人でなんとかしようとした時も、「俺たちは仲間だろ」と協力します。

なので3人共、根っからの性悪でないのでしょう。

ただやること為すことどうにも褒められたものじゃないので、その良さを上回る嫌悪感を感じます。

ユーロポールもMRXさえも上手く出し抜いて悠々と高飛びするのは、モヤモヤする終わり方でした。

 

そしてベンヤミンが想いを寄せるマリ。

彼女は直接グループに関わってくるわけではありませんが、悪ノリパーティーによく参加しているので、ベンヤミンやメンバーとちょくちょく顔を合わせることになります。

最初は口下手なベンヤミンを何とも思っていなかった彼女ですが、徐々に惹かれていきます。

ただその描写が薄いので「いつの間にそんなに好きになったの?」と思います。

悪ノリパーティーに参加するくらいなので、ワルっぽい男性が好きなんでしょうか。

最後には急にメンバーに協力してたりと、尻軽感がすごかったです。

 

そしてユーロポールから派遣されてきたサイバー犯罪捜査官のハンネ。

自分に厳しく、今の仕事に誇りを持っている凛とした女性です。

彼女は自首してきたベンヤミンの取り調べをしますが、実は長く成果を出せてないことから担当を降ろされ停職処分になっていました。

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ベンヤミンは彼女の情報をハッキングで知っており、「仲間が殺され自分もMRXに命を狙われている。奴の情報を渡すから証人保護をしてほしい。」と取り引きを持ちかけます。

狙われないよう戸籍を書き換え、保釈してほしいということです。

「クレイ」の一味としてベンヤミンも罪を犯していますが、それを見逃すことになります。

しかしMRXはずっと追ってきた大物であり、それを逮捕したとなれば彼女は復職どころか一気に昇進もあり得る話です。

彼女は仕事に復帰したい思いと、長年追ってきたMRXを捕まえたいという思いから取り引きに応じることにしました。

そのおかげでMRXを逮捕に追い込み、ハンネは復職できます。

例え小物だとしても、犯罪者を見逃して自分の地位を取り戻すのはどうなんでしょう。

だからといってMRXを捕まえられたのはベンヤミンの助力あってこそですし…取り引きを反故にしてベンヤミンも逮捕するか…道徳的に難しい問題ですね。

 

ちなみにMRXとのやりとりは全てネット上で行われますが、アンダーグラウンドなネット空間を映像で可視化しています。

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こんな感じで皆顔を隠して会話します。

かなり不気味な雰囲気です。

トロイの木馬や、ファイヤーウォール的な防衛ラインを突破するなど、物理的に表現してくれるので理解しやすかったです。

 

結局ハンネは約束を守ってベンヤミンに証人保護を適用するのですが、それはハッキングさせるという不正な方法でした。

きっかけはベンヤミンが語る「クレイ」の仲間が本当に存在するのか…とハンネが疑問に思ったことでした。

気になったハンネは仲間が殺されたという現場に向かいますが、そんな痕跡は一切見当たりません。

さらにベンヤミンが幼い頃に自殺した母親が通っていた病院に聞き込みに行きます。

彼の母親はいわゆる多重人格症でした。

多重人格は遺伝する可能性もあり、ドラッグなどで発症しやすくなると医師は話します。

ハンネはベンヤミンが多重人格症だと確信しました。

取り調べ室に戻った彼女は、ベンヤミンが語るハッカー集団「クレイ」の3人は己の別人格であり、本当は全て1人でやったのでしょう?と問い詰めます。

ベンヤミンは動揺し、自分は母親とは違う…!と頭を抱えます。

証人保護は精神疾患の疑いがあると適用できません。

約束通りMRXの情報を渡したのに…と嘆くベンヤミンにハンネは同情しますが、どうしようもありませんでした。

警察への引き渡しに行く道中、ハンネはベンヤミンから「貴方のことを調べて申し訳ないと思ってる」と言われます。

それを聞いたハンネは彼をPCのある部屋へ連れて行き、ベンヤミン自身にハッキングさせて証人保護を取り付けるのでした。

正義感の強い彼女としては、ベンヤミンの境遇に同情すると同時に、約束を破ることに罪悪感があったのでしょう。

 

ハンネはベンヤミンを人気のない場所まで車で送り、もうハッキングはしないと約束させて解放します。

最後にベンヤミンが披露した角砂糖を使ったマジックのタネを教えてほしいと頼むと、ベンヤミンは「知ったらガッカリするよ」と言いつつタネ明かしします。

右手の4つの角砂糖を左手に持ち替えると1つになっている。

右手を見ると、3つは指で隠してある。

そんな単純なトリックを見せて、ベンヤミンは去っていきます。

その姿を見送ったハンネは、残された角砂糖を見つめます。

そしてこのマジックのタネと同じく、自分は見事に騙されたのだと気づきました。

 

ベンヤミンが語った話はほとんど真実でしたが、仲間が死んだという話だけ嘘でした。

情報を断片的にすることで相手に多重人格の疑いを持たせ、自ら調べさせることによってその疑いを確信に変えさせたのです。

犯行現場に何も痕跡がないのは当然です。

仲間は皆生きているのですから。

このままMRXを野放しにしていたら自分達はいつか殺されると思った4人は、MRXを追い詰めた上で海外逃亡できるよう今回の策を練ったのでした。

ベンヤミンが誘ったマリも協力しています。

取り調べ室でのやり取りは全てベンヤミンの演技であり、まんまと手のひらで躍らされていたのです。

騙されたことに気づいたハンネですが、そのまま無かったことにしてしまいます。

ベンヤミンのもうハッキングはしないという言葉を信じたのでしょうが、なんだか釈然としない終わり方でした。

 

ただ、私も綺麗に騙されましたね!ε-(´∀`; )

最初に多重人格の話になって「あぁそっち系か」と思ったんです。

多重人格トリックの映画を何本か観ていたので、またかと思いました(笑)

捕まったMRXは実は別人で、本当のMRXもベンヤミンの人格の1つだったというオチを予想するもハズレ。

実はハンネがMRXだったという予想もハズレ。

まさかハッカー集団と見せかけて、実は多重人格で全て1人でやった…からの、実は自白が巧妙なトリックで本当に4人いました〜は予想できなかった!!

ハンネだけでなく観る側にもここまで巧妙に心理トリックを仕掛けるとは。

 

人は見たいものしか見ない。

 

それがこの作品のメッセージでしたが、どちらかと言うと「人は見えない部分を勝手に想像し補う」だなと思いました。

惜しい部分は多々ありましたが、最後だけは星5です!

ハリウッドリメイクがあるなら、このラストはどうなるのか楽しみです。

 

ここまで読んでくださりありがとうございました(*´ω`*)ゞ

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※内容は予告なく変更されたりします。

 

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