みこブロ

思ったことを好きに書いていきます。今は初心者、女性目線(になってるかは謎)の映画レビューがメイン。時々日常。興味があればまったり覗いてみてください(*'ω'*)

『感染』評価・感想*和製ゾンビと思いきや

 

※後半にネタバレあり(注釈後)※

 

 

映画感想語り、今回は『感染』(2005年)です。

 

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邦画ホラー。監督は落合正幸

世にも奇妙な物語』の一作『急患』が原案(君塚良一)です。

怖い和製ゾンビと聞いて観てみましたが、ゾンビとはちょっと違う感じです。

有名な和製ゾンビ映画『アイアム・ア・ヒーロー』や『カメラを止めるな!』とはだいぶテイストが違います。(カメ止めはそもそもアレですが)

『カメラを止めるな!』評価感想*新感覚ホラー!? - みこブロ

 

*あらすじ*

舞台は古い救急病院。

人手不足で医師も看護師も疲労困憊。

経理の手が追いつかず給料すら支払えない状態に、内科医の魚住(高嶋政伸)はイラつき外科医の秋葉(佐藤浩市)に食ってかかります。

予算がなく薬や医用品の配給も追いつかないと看護師長の塩崎(南果歩)はグチをこぼし、それなのに患者はどんどん押しかける状態に皆ピリピリしていました。

ある夜、重度の火傷で全身包帯まみれの患者が急変します。

それと同時に重症の急患が運ばれてきますが、もう受け入れられないと秋葉は断ります。

一刻を争うと救急隊員に責められるも、強引に拒否して火傷患者の元へ向かいました。

必死に処置をするも、とあるミスで死なせてしまいます。

疲労で朦朧としていて誰が悪いのかもよく分からなくなっており、限界状態の今医療ミスを報告したら終わりだという魚住の意見で隠蔽することに。

休憩していた師長がふと監視カメラの画面を見ると、急患入り口に担架に乗せられた患者が映っていました。

秋葉に報告して、2人は見に行きます。

そこに担架はなく、血の跡のようなものがとある部屋に続いていました。

そこにいたのは同僚の医師・赤井(佐野史郎)。

赤井は「この患者は未知のウイルスに感染している」と言い、報告する前に自分達だけで調べて手柄にしようと誘います。

患者はドロドロに溶けて緑の液体にまみれた酷い状態でした。

なのに意識はあるようで、何故か微笑みかけてくるというおぞましさです。

異様な姿に一刻も早く報告しようとするも、隠蔽を知っているような口ぶりの赤井に渋々従う秋葉と魚住。

師長がその患者を見張っていると、急に涙を流して倒れます。

様子を見に来た秋葉と魚住は、患者が消えているのを見て愕然とします。

緑の液体はすぐ近くのダクトに続いていました。

皆が疲労と不安を抱えながら、恐怖の一夜が幕をあけますーー

 

*評価(最高★5)

 

全体 ★★★★☆

王道の和製ホラー。

背筋がぞくぞくするような見せ方はジャパニーズホラーならではですね。

何かいるのかいないのか、そして人間の心理。

姿は見えないのに非常に怖い。

音1つ、行動1つが全部怪しく不気味に見えてきます。

ただの感染モノではありません。

意識とは何なのか、考えさせられます。

難点は全体的に声が小さくて聞き取りにくいこと。

 

怖さ ★★★★★

洋画ホラー的な怖さを期待すると肩透かしをくらいます。

じっとりしたジャパニーズホラーの怖さです。

大きな驚かしは少ないですが、夜の病院という舞台と狂気をはらんだ空気感はひたすら怖いです。

音楽がまた恐怖感を煽ります。

そもそもリアルにありそうな病院のブラックっぷりが怖い…

あと佐野史郎はいるだけで怖いです(褒め言葉

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グロさ ★★★☆☆

直接的なスプラッタ表現はありませんが、観ていて気持ち悪いグロさがあります。

皮膚が腐ったり、傷を縫ったり、注射器ぶっ刺したり。

派手にグロいのより想像しやすくてキツいかもしれません。

 

オススメ度 ★★★★☆

ジャパニーズホラーが好きならかなりオススメです。

俳優陣も豪華ですよ!

ベテラン陣の素晴らしい演技が恐怖を盛り上げてくれます。

個人的に洋画ホラーは平気ですが、邦画ホラーは観た後に何とも言えない嫌〜な恐怖感が残ります。

この作品を見たら夜の病院が怖くて仕方なくなりますよ:;(∩´﹏`∩);:

※ここからネタバレ感想↓※

 

 

 

 

ネタバレ書き中……_φ(・_・

 

 

 

 

 

ーーーー

※ここからは内容を知っている前提です。

 

こわいこわい!!

やっぱり和製ホラーは苦手です。

夜が怖くなってしまう:;(∩´﹏`∩);:ぶるぶる

演出も音楽も、日本人の恐怖ポイントを突くのが上手いです。

舞台が身近なだけにリアルに想像してしまいます。

あとはやっぱり人間の情念というか、ドロドロした部分を使うのはジャパニーズホラーの得意分野ですね。

 

冒頭から救急病院のブラックっぷりをまざまざと見せつけられて怖いし心が痛い。

ノンフィクション感が笑えないです…

今も病院の内情は非常に大変だと思うので、まだブラック企業なんて言葉がなかった時代は本当にこんな状態だったんじゃないかと想像してしまいました。

この作品は、そんな極限の医療環境じゃいつか起こるであろう医療ミスという悲劇です。

そして限界状態の人の意識や罪悪感を感染という恐怖で表現してますね。

赤を赤と認識できるのは脳が意識的にそう見せているから。

赤を緑だと思い込めば緑になるのです。

そこに「いる」と思い込めばいるのです。

 

最初はあの様子がおかしい男性患者が感染源だと思ったのですが、見事なミスリード要員でしたね。

認知症のおばあちゃんも豹変したりするのかと思いきや、ちょっとおかしいけど可愛いおばあちゃんのままで安心しました。

狐面の男の子に至っては、誰も話しかけないので幽霊だったんじゃないかと思ってます。

患者に何かあると見せかけて患者は何もしない、感染もしない、ただの不気味さ演出要員でした。

なぜならあの感染は特定の人しか感染しないから。

それは後で考察として書きます。

 

あの病院は変わった患者が多いですが、スタッフの方も実際現場にいたら絶対看てほしくない方が2名…(;´Д`)

傷を縫うことに異常な執着を見せるけど恐ろしく下手な若手外科医・平田。

ドジっ娘では許されないほど注射が苦手な看護師・安積。

そんなに注射がしたいなら自分の身体で練習しなさい!と言われて狂った彼女は怖かった…。

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さすがに勢いをつけて患者に注射しようとするのは、あり得なさすぎて笑ってしまいました。

そりゃ先輩達も全力で止めるよ(゚-゚;)

そしてなんといっても佐野史郎演じる赤井先生のインパクトよ。

佐野史郎の顔がどうしようもなく怖く見えるのは役柄的な先入観(ちょっと異常な役が多いですよね)なのか…同感な読者様がいましたら、一言頂けると嬉しいです(笑)

 

ここから考察も交えて語っていきます。

現実と幻覚の境目が分かりにくい本作。

意図的にそうしたのでしょうが、自分なりの見解を書いてみます。

 

赤井先生は作中実際にはいない人物でした。

人手不足なのに休みだったとは考えにくいので、過去にいたのか、罪悪感が生み出した架空の人物なのかと考えます。

この病院に長く勤めていそうな人物が皆共通して見ているので、過去に医師として存在していたのではないかと思います。

そして何らかの罪悪感の象徴だった。

私は全身火傷の患者が赤井だったと思っています。

 

・最後の方で、抜いてあるはずの火傷患者の名札に赤井と書いてあり、包帯の下に赤井の顔が見える描写がある。

ただの幻覚との見方もあるが、実際にミスした後に隠蔽の為に名札を抜き取ったのではないか。

 

・「私はあそこで寝ていた。でも意識はあった。ずっとだ。」という、その場にいて隠蔽を知っているような台詞。

 

・お前が嫌いだという魚住に「君は患者を愛せない」と言い放つ。

火傷患者は魚住が担当している患者だった。

 

・意図的に罪悪感と未知のウイルスへの恐怖を意識に刷り込み、病院関係者(隠蔽関係者)だけを感染させている。

 

この4点からです。

冷静に考えれば死んだはずの人間がいるはずがないですが、殺してしまった罪悪感と極限状態の疲労から、赤井に医療ミスの秘密を握られていると思う医師達。

救急搬送された患者は別の病院に回されており、こちらも本来いるはずがない存在です。

あの救急隊員が嘘を言っている可能性もありますが、マスコミに発信している以上、嘘ならすぐにバレそうな気がします。

なのであの急患がいなかったと仮定すると、医師達がみた緑のドロドロはまさに罪悪感が作り出した幻覚だったのではないでしょうか。

幻覚の赤井に新種のウイルスに感染していると言われることで、おぞましいイメージが植えつけられたのだと思います。

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まさに罪悪感が微笑みかけてきたわけですね。

それを発端に皆夢か現実か分からない幻覚を見始めます。

疲労、さらに睡魔も限界、そんな極限状態です。

死んだはずの(と意識下では認識している)同僚・赤井が存在しているのですから、同じく死んだはずの看護師達が起き上がってくるような幻覚を見てもおかしくないです。

そのうち罪悪感と恐怖は文字通り「感染」し、看護師達は正気を失い始めます。

感染した罪悪感と恐怖は、自身の不満や苦しみをも発露して彼女達を恐ろしい行動に駆り立てるのでした。

 

それを見て自分の正気を疑った秋葉は、メスで指を切ってみます。

その血は赤く、自分はまだ感染していないとホッとします。

秋葉は「この病院をウイルスの実験場にした!」と赤井を責め立てます。

赤井を悪者にすることで、自分達のやったことから目を背けようとした部分もあるのでしょう。

そこを出勤してきた精神科医・中園に声をかけられ、自分が鏡に向かって話しかけていたことに気づきます。

認知症のおばあちゃん同様、鏡の中に写る意識の世界と会話をしていたのです。

赤井は言っていました。

 

「このウイルスは意識に感染する。」

 

つまり罪悪感を共有してる者たちのみに感染する。

だから院内感染で全滅はしないし、関係のない患者や平田には感染しなかったのです。

(隠蔽現場にいたおばあちゃんは理解していないから大丈夫)

 

先程の異様な行動、そして周囲の惨状、血のついたメスと血まみれの手を見て中園は秋葉を恐れ、殺人です!と通報します。

自分に向けられた恐怖の表情を見て、秋葉は初めて周りの惨状を自覚します。

そこには赤い血を流して絶命している看護師達の無残な姿。

確かにウイルスに感染していたはずなのに…中園の反応に、まさか自分がやったのかと狼狽える秋葉。(おそらく皆自殺に近いでしょうが)

赤井は存在しないのか…自分がおかしいのか…

そんな増幅した罪悪感が、ついに自分の意識を追い詰めます。

秋葉と魚住は、赤井のやることを罪だと責めながら感染源を探し回っている間、自分の罪悪感を多少忘れていたのでしょう。

しかし赤井は実際にはおらず、自分がやったことの重大さを改めて思い出しました。

罪悪感の発露。感染です。

病室に逃げ込んだ秋葉は、いつのまにか自分の血が緑になっていることに絶句します。

おばあちゃんが「まだそこにいるのね」と声をかけるのを見て、火傷患者が寝ていたベッドを確認すると、包帯の下は赤井の顔だったという幻覚(フラッシュバックと幻覚が混ざったのかも)を見ます。

次の瞬間自分が赤井の顔は自分に変わり、あの夜の緊急処置を自分がされているところでした。

秋葉が「塩化カルシウムを!」と看護師に指示を出すと、その看護師の隣で赤井が「塩化カリウム」と呟きます。

火傷患者と化した秋葉は声も出せず身体も動かず。

塩化カリウムを投与しようとする看護師に、やめろやめろ!!と心の中で叫ぶも届かず、注入されてしまいます。

赤井は最後に、自分の恐怖や苦しみを秋葉にも味合わせようとしたのかもしれません。

この惨劇は、感染というより「呪い」に近いものだったのでしょう。

狐面の子供の幽霊や、面会に来た首のない老婆、そして鏡の中に死後の世界を見ている認知症のおばあちゃん。

この病院は死後の世界に近かったのではないでしょうか。

 

一晩中傷縫いの練習に夢中になっていた平田は、疲労と睡魔の限界でいつのまにか気を失うように寝ていました。

目覚めると手に覚えのない血がついており、慌てて洗い落とします。

そして病室のベッドで仮眠していた岸田先生を起こしに行くと、胸の辺りが不自然な形に盛り上がっているのに気づきます。

シーツをめくると、岸田の胸には人口皮膚で練習していたはずのものと全く同じ傷と縫合跡がありました。

意識のない内に自分がやったのか、手に付いていた血はそれだったのかと平田は混乱します。

その後の描写はないですが、平田も感染したかもしれません。

 

中園の通報により一連の事態は錯乱した秋葉の殺人とされ、病院は閉鎖されることになりました。

患者は別の病院に移送されます。

冒頭の植物状態の男性を搬送していた隊員が、担当医としてサインをしてほしいと中園に声をかけます。

関わりたくなかった中園は、つい「そんなのチューブ抜けば終わりじゃない!」と声を荒げます。

その後我に返ってサインをしますが、先程の発言は故意に殺すこと(隠蔽)を容認するようなものでした。

私物をまとめて出て行こうとした中園は、ふと鏡の前で足を止めます。

その後歩き出そうとすると、赤いランプが緑に見えます。

慌てて周りを見回すと、赤いものが全て緑に見えて悲鳴をあげます。

彼女も感染という呪いに捕まってしまいました…。

そして最後に1つのロッカーから大量の緑のドロドロが流れ出し、「助けて」と呟く魚住の手が出てきて終わります。

 

感染理由としては、

看護師長→隠蔽を悪としながら結局同意してしまった&感染の危険を報告しないことにも同意してしまった罪悪感

安積まどか→隠蔽現場を見ていた&注射下手のせいで患者を殺してしまった罪悪感

桐野優子→隠蔽現場にいた&後輩を追い詰めておかしくしてしまった罪悪感

立花七恵→判断ミスに気づかず患者に間違った薬を投与してしまった&隠蔽した罪悪感

秋葉清一→薬名を間違えて医療ミスをした可能性かつ隠蔽&自分が皆を殺したかもしれない罪悪感

魚住晴哉→隠蔽の提案者&最後まで保身に走った罪悪感?

平田俊一→無意識に岸田を切り裂き殺してしまった罪悪感(ただし死亡したかは不明)

中園雪乃→植物患者に「チューブを抜けば終わり」と発言してしまった罪悪感(こちらも死亡したかは不明)

という感じでしょうか。

 

長々と考察してみましたが、正解は全然分かりません(笑)

たぶん正解はないのでしょうが。

救急搬送された患者が本当に残されていたとしてもいなくても、赤井が何者だとしても、よく分からない部分や謎は残ります。

何にせよ、単に意識に植えついた罪悪感が見せた幻覚だけでなく、呪いのような霊的なものも干渉していたのではないかと思います。

赤井という名前も、映画のキーワードである「赤い」を意味してるのはなんとなく分かりますが、うまく絡めた考察はできませんでした(;-ω-)ゞ

前述したように、

赤も意識が緑と認識すれば緑に見える。

赤井も意識が「いる」と認識すれば存在する。

ということでしょうか。

確実に分かるのは『後ろ暗いことはするな』ということと『過酷な労働環境は人を狂わせる』ということです。

特に後半は今の日本に響くメッセージですね。

無理はよくない!絶対!!

 

ここまで読んでくださりありがとうございました(*´ω`*)ゞ

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※内容は予告なく変更されたりします。

 

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